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登録有形文化財
4.旧第二高等学校書庫の修復
Repair Work for Formerly the library stack for Japan’s Second Senior High School


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 旧第二高等学校書庫は明治43年ごろの建設以来、100年以上の年月に渡り片平キャンパスに立つ歴史的建造物です。(>旧制第二高等学校のキャンパス・歴史
 煉瓦造で内壁が漆喰塗りであることから、調温・調湿に優れ、書庫としての役割を終えた後も、文化財の収蔵庫として使用されてきました。
 しかしながら、2011(H23)年の東日本大震災では、外壁にひび割れが入るなどの被害を受けました。ひび割れを塞ぐなどの復旧はしたものの、隙間から雨水などが壁面に流入し、内壁の漆喰もダメージを受けたり、 さらには2021(R3)年、2022(R4)年の2回にわたる大きな地震でさらに被害が拡大するなどしていました。
 こうした状況を改善し、旧制第二高等学校の歴史を残す登録有形文化財として今後も長く保存・活用するために、今回大規模な修復工事を行っています。

今回の修復工事の主な内容

1. 煉瓦壁体に発生したひび割れの補修:アラミドロッドによるひび割れ部の補修+スラリー充填による止水
 窓など開口部周辺の煉瓦目地などに多数生じているひび割れには、アラミドロッド(アラミド繊維を組紐として組んだものにエポキシ樹脂を含浸させた連続繊維補強材)によって縫合します。 同時に亀裂部にスラリー(セメントと水の混合液)充填も行い、ひび割れ部分の一体化を図ります。またスラリーを充填することによって、漏水経路を遮断します。

アラミドロッド

2. 地震時の変形抑制:地震時の応力集中部へのアラミドロッド施工、壁体最上部での鉄骨造水平構面の設置
 地震時の応力集中によりひび割れの発生が懸念される部位(窓など開口部の上下)に、アラミドロッドを配置し、新規のひび割れを抑制します。
 さらに、地震発生時の壁の面外方向(外側)への崩壊防止のため、壁の最上部に鉄骨のフレームを挿入し、水平構面を構築します。

進捗状況(施工(株)コンステック)

2023.7.31

改修完了。
外壁は、目地にアラミドロッドを入れ目地詰めしました。新しい目地も既存の目地と色合わせをし、違和感がありません。
東日本大震災後に仮補修されていた部分も綺麗に元の状態に戻し、欠けていたレンガも補修しています。

外壁


レンガ補修部分およびアラミドロッド挿入部

2023.7.31

改修完了。
内壁は、目地にアラミドロッドを入れ目地詰めした後、元の通りの漆喰で仕上げています。
3階部分は補強の鉄骨フレームの下に天井を貼り仕上げています。

漆喰による仕上げ


3階天井部

2023.6.28

外壁の目地へのアラミドロッドの挿入。
この上から目地材を入れることにより外観上はこれまでと変わらず、強度をあげることができます。
また、地震で損傷を受けたレンガは新しいものと置き換えて、ヒビからの雨水等の侵入を防ぎます。

目地内のアラミドロッド


目地内のアラミドロッド

2023.6.28

3階の木造トラスの下への鉄骨フレームの設置が完了しました。
これにより、壁が外側へ傾くのを防止します。
最終的には天井を鉄骨の下に復元することで鉄骨自体は見えなくなります。

鉄骨フレーム1


鉄骨フレーム2

2023.5.10

宮城県教育委員会、仙台市教育委員会から見学にいらっしゃいました。
内部のレンガ目地はアラミドロッドを入れるための撤去が始まっています。
漆喰が撤去され、レンガと窓枠の取り合いなども見えています。
また、漆喰に隠れていたレンガの損傷も見えます。

目地撤去状態


窓枠とレンガの取り合い

2023.5.10

目地の中に挿入するアラミドロッドは引張強度が高く、挿入することで変形性能が向上します。
また軽量な補強材のため、補強後の重量増加がわずかです。目地内の補強のため、意匠にも影響を与えません。

アラミドロッド
付着性能を高める砂が付着したもの


角用アラミドロッド

2023.4.4

外部足場が四周にかけられました。

足場設置前


足場設置後

2023.3.23

内部の壁の漆喰を撤去。表と同じ煉瓦の表情が内部にも現れました。

1階


3階

2023.3.23

3階に張られていた天井を撤去。木造トラスの小屋組が見えています。