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登録有形文化財
10.旧東北帝国大学工学部機械学及び電気学教室
Formerly Engineering Faculty’s Machine & Electrical Engineering Lecture Rooms at Tohoku Imperial University


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工学部機械学及び電気学教室 工学部機械学及び電気学教室 工学部機械学及び電気学教室 工学部機械学及び電気学教室

建設年:1930(昭和5)年
構造等:鉄筋コンクリート造地下1階地上3階建
建築面積:1,662㎡
現在位置:F01 多元物質科学研究所 南1号館
登録年:2021年


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 旧東北帝国大学工学部機械・電気工学教室(現在のF01 多元物質科学研究所 南1号館)は、片平キャンパス北門から伸びる道路を南へ進み、ロータリーを左手に曲がってすぐの南側に位置する建築です。
 国有財産台帳によると当該建築は1926(大正15)年に焼失した機械工学及電気工学教室の新築として1930(昭和5)年に完成しました。 建築主は東北帝国大学であり、当時営繕に係る責任者は営繕課長の小倉強、および增田八郎でした。小倉は片平キャンパスの拡張の中で、 大正末期より東北大学附属図書館などの設計も手がけています。

 北側を正面としたL字形の平面を持つ地下1階、地上3階建ての鉄筋コンクリート造建築です。屋根は陸屋根、北面中央部にアーチ状の入り口を持つ花崗岩貼りの玄関を突出させて設けています。 建築当初、外壁の低層部はタイル貼りでしたが2001(平成13)年の改修によりタイル貼りの上から塗装が吹き付けられた仕上げとなっています。 1階は当初はアーチ窓でしたが現在アーチ部はパネル化されています。また2階は当初は上げ下げ窓でしたが、現在は縦長の窓に作り変えられています。

 内部は、東西方向は中廊下型の平面、東側のL字の短手部分は片廊下型の平面で、『宮城県の近代化遺産-宮城県近代化遺産総合調査報告書-』(平成14年3月 宮城県教育委員会)によると 廊下に沿って教授室、助教授室、講義室、実験室などが配されていました。著名な研究者である八木秀次、宮城音五郎などの教授室も当該建築の2階に設けられていました。 1階には電気事務室、機械事務室が置かれましたが、玄関両脇には工学部庶務室、工学部会計室も配され、「工学部本館」とも通称されました。
 エントランスを入ってすぐに吹き抜けの大理石貼りの階段が設けられ、広がりのあるエントランス空間となっています。 突出した玄関の上部には、やや後退させて2階に会議室、3階に学生控え室を乗せ、4本の壁柱の間にデザインの異なる2種類のタイル貼りの面と縦長の窓を配した縦を強調した左右対称のファサードを整え重厚な雰囲気を作り出しています。

完成当時の1階平面図
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2階平面図
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3階平面図
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 1964(昭和39)年からの青葉山への工学部の移転後は、選鉱製錬研究所、素材工学研究所などが使用し、現在は多元物質科学研究所の研究棟として使用されています。 近年では2001(平成13)年に外部改修、2007(平成19)年に耐震改修・外部改修・内部改修を行っています。階段教室であった大講義室から実験室への改修や、間仕切りの変更などは行われているものの、旧状を留めながら活用されています。

 東北帝国大学の工学部の初期の姿を伝える貴重な建築です。また左右対称の立面は仙台市内でほぼ同時期に建てられた旧宮城県立仙台第二中学校校舎、仙台市庁舎、宮城県庁舎などにも見られましたがこれらの建物は現存せず、 その時期の建築様式の実例としても貴重な建築です。