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登録有形文化財
8.旧東北帝国大学理学部化学教室棟
Formerly the Faculty of Science’s Chemistry Lecture Rooms at Tohoku Imperial University


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理学部化学教室棟 理学部化学教室棟 理学部化学教室棟 理学部化学教室棟 理学部化学教室棟 理学部化学教室棟

建設年:1932(昭和7)年/1935(昭和10)年増築
構造・階数:鉄筋コンクリート造3階一部地下1階建
建築面積:871㎡
現在位置:B02 東北大学本部棟 1
登録年:2017年


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 東北帝国大学理学部化学教室(現在のB02 東北大学本部棟1)は片平キャンパス北門から入り、最初のT字路の右手に見える建築です。
 鉄筋コンクリート造3階建(一部地下1階)陸屋根形式の建築で、東西に長く東端で北側に折れL字型の平面を呈しています。 南面を正面としたファサードは東西中央の3層吹き抜けの玄関部分に太い列柱を立て、壁面は柱型を露出させて3階まで通し、西端の階段室を塔状に立ち上げ全体的に垂直性を強調した意匠となっています。
内部は北側に廊下を持つ片廊下の平面であり東西の中央に3層吹き抜けの階段のある玄関となっています。外壁仕上げは玄関周りが石張り、主に南・東面がスクラッチタイル張り、北面が塗料仕上げです。

 当該建築は1907(明治40)年創立の東北帝国大学によって建てられました。東北帝国大学は農科大学と理科大学とで出発し、1919(大正8)年、理科大学は理学部となります。 理科大学は当初数学、物理学、化学、地質学の4つの教室により成っていましたが、次第に講座の数が増え充実していきました。これに伴い本建築は同時期に東北帝国大学理学部化学教室として建築されました。

 国有財産台帳および『宮城県の近代化遺産-宮城県近代化遺産総合調査報告書-』(平成14年3月 宮城県教育委員会)によると3期に分けて建設され、1927(昭和2)年に東側部分が、1932(昭和7)年には南東角部分が完成、 さらに1935(昭和10)年に南側部分が完成し現在の形となりました。
 正門からの通りと北門からの通りの交差点に面しており、北側の旧東北帝国大学工学部金属工学教室に合わせてスクラッチタイルや円弧を用いた意匠が採用されています。 建設当初は教授室、会議室の他、実験室が多く設けられました。

1934(昭和9)年3月の配置図
東北帝国大学本部理学部及工学部法文学部金属材料研究所平面図より
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1936(昭和11)年3月の配置図
東北帝国大学本部理学部及工学部法文学部金属材料研究所平面図より
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建設当初 西側から
塔状の階段室と垂直性を強調したファサード

1935(昭和10)年ごろ
列柱の並ぶ玄関

 その後1973(昭和48)年の理学部の青葉山移転に伴い、1階部分は医学部、理学部、文学部等の標本類を収蔵する標本室として使用、2階3階は未使用でした。 1995(平成7)年、青葉山キャンパスに自然史標本館が開館したことにより当該建築から標本室としての機能が移転、 しばらく空き家状態が続きましたが、2004(平成16)年から大学本部、法科大学院、公共政策大学院等が使用、 2011(平成23)年以降は総長室・理事室・会議室・事務室等東北大学本部が使用しています。

 登録有形文化財にあたるのは1932(昭和7)年完成の南東角および1935(昭和10)年完成の南側部分です。 これらは近年では2003(平成15)年に耐震改修、内部間仕切りの変更に伴う床、壁、天井の改修および電気、給排水、空調設備改修と一部タイル張り替えを含む外壁改修、2010(平成22)年に一部居室の床、壁、天井の改修が行われています。
 1927(昭和2)年に完成した東側部分は、建物としての強度が不足していたため、2015(平成27)年に東側のファサードを復元する形で改築を行っています。

 仙台市は戦災による被害が甚大であり、近代以前の歴史的建造物の多くは現在に残っていません。しかし、本建築においては建設当時から残る大玄関、垂直線が生み出すインパクトとスクラッチタイルの表情は今も美しく保たれており、 これらの意匠と周囲の緑があいまって、学都仙台のシンボルといえるような雰囲気を片平キャンパスに作り出しています。片平地区の学術エリアとしての歴史を伝える建築として貴重な建築です。

→登録有形文化財 旧東北帝国大学理学部化学教室棟のタイルいろいろ(PDF 3.9MB)