本多記念館は、片平キャンパス北門の前を通りに沿って西に進んだ北側に位置する建築です。
『金属材料研究所創立百周年記念誌』(平成29年5月 東北大学金属材料研究所)によると東北帝国大学第六代総長本多光太郎の東北帝国大学在職満25周年にあたり、
その功績を記念し記念会が組織され、拠出された寄付金をもとに1939(昭和14)年に起工、1941(昭和16)年に完成しました。
本多光太郎は当時の鉄鋼研究に関する第一人者で、金属材料研究所の初代所長を務め、総長就任後も研究所長を兼務するなど、金属材料研究所の発展を主導した人物でした。
建築主は東北帝国大学であり、当時営繕に係る責任者は営繕課長の堀井啓治、および楠冨士太郎でした。
南側を正面とした方形の平面を持つ一部地下1階、地上3階建ての鉄筋コンクリート造建築です。屋根は陸屋根、外壁は柱型が強調されたタイル貼りの面と引き違いの窓で構成されています。
玄関部分には車寄せを設け、大きな庇で覆っています。
内部は中廊下型の平面であり、『金属材料研究所創立百周年記念誌』によると、建設当初は廊下に沿って研究室のほか、記念資料室、所長室、名誉教授室、図書室、事務室などが配されていました。
玄関ホールおよびそこから続く吹き抜けの階段室は大理石仕上げとなっています。
建設は戦時中であり、鉄鋼使用が制限されていたため建築許可に手間取り、ようやく1939(昭和14)年に起工、竣工は1941(昭和16)年と建設に2年の歳月がかかりました。
東北帝国大学は、1947(昭和22)年に東北大学に改称、1949(昭和24)年に新制大学へと改組されました。これに伴い本建築も所管が引き継がれました。
近年では1994(平成6)年に壁面の補強を含む外部・内部の全面改修、さらに新たに金属材料研究所の共同研究員等のための宿泊施設や技術相談室が設けられました。
2016(平成28)年の金属材料研究所創立百周年には本多記念室と資料展示室をリニューアル、現在は宿泊施設や技術相談室の他、金属材料研究所の事務室、会議室などとして使用されています。
(本多記念室・資料展示室見学についての詳細は>こちらから)
全面タイル貼りによる縦方向を強調した列柱型外観や、大理石貼りによる重厚なエントランス・階段周りなど建築意匠的な価値があります。
また東北帝国大学金属材料研究所および本多光太郎を記念する歴史的な価値があるとともに、戦時下における建設という貴重な側面も併せ持つ建築です。